演奏会
卒業生からコンサートのお誘いがありました。
演目は、ピアノ協奏曲が2曲だけという珍しいタイプ。
しかも1人1曲で2人のピアニストです。
サンサーンス ピアノ協奏曲 第5番 「エジプト風」
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番 「皇帝」
卒業生はバックのオーケストラでオーボエを吹くというので、27日の夕刻に渋谷に出かけてきました。
2曲とも大好きな曲で、以前はダイナミックな「皇帝」を良く聴きましたが、最近は「エジプト風」の軽く爽やかな曲想がとても気に入っています。
サン=サーンスがナイル川で聴いたというヌビアの愛の歌によるメロディが第2楽章に現れ、これがとっても綺麗でいいんです! 題名の由来でもありますね。
カミさんと一緒にサンサーンスの5番が聴けて、楽しい演奏会でした!
演奏会
東日本大震災復興支援チャリティーコンサートに出かけてきました。
入間市武蔵藤沢駅近くにある、武蔵ホールというごく小さなホールで行われました。
地元の住宅リフォーム業者である「株式会社アイライフ」さんが主催されていて、今年で4年目になるんです。
演目は、
1.マスネ : タイスの瞑想曲
2.ベートーヴェン : ヴァイオリンソナタ「春」
3.團伊玖間 : 紫陽花
4.菅野祥子 : 春なのに
5.ベートーヴェン : ピアノソナタ「テンペスト」から
6.ジーツィンスキー : ウィーンわが夢の街
7.バレエパフォーマンス(モーツァルトのトルコ行進曲アレンジ版による)
その他
です。
「春なのに」を作詞作曲された菅野祥子さんは、被災地陸前高田市の出身で、
震災の10日後に、故郷の人々の心の痛みと故郷への想いをこの曲に綴った、
とありました。
この曲は、あらためて歌詞も見ながら聴きたい曲だと思いました。
「タイスの瞑想曲」、「ウィーンわが夢の街」も琴線に触れる曲ですよね!
休憩をはさんだ後には、可愛らしい3人娘が登場して、何と創作バレエでした!
何とかこの企画をお手伝いしたいという地元バレエスタジオの綺麗なバレリーナさん達が、お茶目で楽しいパフォーマンスを披露してくれました!
さて、自分はこのコンサートは2回目で、ホールとピアノにとても感激していました。
ピアノは音量の大きなスタインウェイではなく、ニュアンスを大切にしたベヒシュタインなのです。
奏者のニュアンスが伝わる小ホールの良さは格別で、大ホールにはない魅力があります。
そして、4人のプロ奏者の方の心のこもった演奏に毎回引き込まれてしまうんです。
2年前、自分は、コンサートという気持ちで来場しなかったので、演奏が始まったとたんに、「はっ!」と目を覚まされました。
今回も、4人の奏者が気持ちのこもった演奏を届けて下さいました!
特に今回の演奏で思わず深く引き込まれたのが、中林愛さんというピアニストなんです!
自分が素人ながらに感じたのは、流れやダイナミクスがとても自然で、歌のような素晴らしい呼吸を感じました。
小さくまとまってしまったり、急に大きな音を出したりということも決してありませんでした。
盛り上がりも自然で、しかしフォルテでは充分に大きな音で包み込んでくれました。
このような演奏に突然出逢えるとは・・・! ちょっと涙ぐんじゃいました・・・
こんな聴体験は本当にないことなんですよ!
すごく感謝しています!
このコンサートは、好評のために追加公演が行われることになり、8/30(土)にもう一度開催されるんです。
ぜひお薦めしたいんです!
http://www.ai-life.co.jp/c33-.html
ニュース
マゼールとピッツバーグSOのシベリウス交響曲全集から、手元にあった数曲を聴いてみました。
マゼールに申し訳なかった、と強く思いました。
とてもとても素晴らしいのです!!
1980年代のウィーンPOとの多くの録音は、今聞き直してみても印象は変わらなかったのですが、このシベリウスは、じっくり聞かずにしまい込んだままだったんです。
予定されていたベルリンフィルとの演奏でなく、アメリカのオケで硬い音のCBS録音だからというのもありましたが、自分の中で、シベリウスの交響曲は、3番はカム、4番はカラヤン、6番はバルビローリ、7番はベルグルンド、そして1番2番5番がマゼールの旧盤と思い込んでいました。
これらの演奏と簡単に比較していただけなんですね。
さて、旧録音である1960年代のマゼールとウィーンPOとのシベリウス全集は今でも強烈で大好きな演奏ですが、どうしても好きになれなかったのが、3番、4番、6番でした。今回聴き直しても印象は変わりませんでした。
そこで、ピッツバーグSOとの盤では4番から聴いてみました。最も渋くとっつきずらい4番から。
幽玄な低弦が強くならずに奏され曲は始まります。旧録音とはまるっきり違います。
その後もゆったりととても丁寧に進んでいきます。
そして、何という呼吸の深さでしょう!
繊細なだけではなく、盛り上がるところでは充実した響きで満たされます。金管も包み込まれるような豊かな音です。
また、せっかちに盛り上がることは決してなく、ごく自然にじわじわと盛り上がっていき、大きなクライマックスが築かれます。
この4番は第3楽章ラルゴがさらに幽玄で長く、暗い木管のつぶやきもあります。
この曲は、全楽章を通して、室内楽的な響きが多く、はっきりとした歌のようなメロディーは聴こえてきません。ラストに向かって「解決」となる演奏効果を狙える曲でもありません。
しかし、この演奏は最初から最後まで決して気が抜けることなく、真剣なマゼールを聴く事が出来ました。シベリウスのスタイルにもはまっています。(これも旧盤との大きな違い)
ついでですが、第4楽章で出てくるグロッケンシュピールは、クライマックスだけチューブラーベルになっていました。(通常はどちらかに統一されている?)
5番の演奏でも、仕上げについて全く同じ印象で、素晴らしく充実した響き、繊細な表現、安易な効果を狙わない真剣なマゼールが聴けました。
文句を言う人がいるとすれば、「このシベリウスは立派すぎる」と評するかもしれません。
さて、これなら6番もいいはずです!
旧盤のテンポ、ダイナミクスは自分には受け入れられませんでした。
この曲はひっそりと透明にあくまでも落ち着いて表現して欲しいんです。
こんな中でも激情が湧き上がる箇所が短いながら第3、第4楽章にあります。
そして最後の感動的な高弦の合奏、弱音で終わるフィナーレ。
丁寧に、決してあせらず、気持ちを込めて表現して欲しいんです。
今回の新盤の演奏は旧盤とは別人、別物の演奏でした。
マゼールの演奏は旧盤ばかりほめる自分でしたが、このシベリウスは素晴らしく良かったです!! それも今まで気づかずにお蔵入りにしていたんです。
彼の1990年代以降に感じられた小手先芸のような演奏では全くなかったということが、何よりも嬉しかったです。
マゼールは、ピッツバーグに戻って、いい仕事も残してたんですね!!
3番と管弦楽曲、ヴァイオリン協奏曲は手元になく未聴ですのでこれから入手して聴いてみたいと思います。
とても楽しみです!
ニュース
1960年代、マゼールがウィーンフィルとDECCAに録音したディスクは今でも(これからも)輝きを失わない素晴らしい鮮烈な記録だと思っています。
これらの記録は「迷いなく一気呵成に前進する、生命力みなぎる演奏」とでも言えると思います。
このような特徴は若い演奏家共通のものでもあると思うのですが、それに加えてマゼールは演奏の真剣さ新鮮さで際立っていて、彼の若い時の記録は正にオンリーワンであったと強く思うのです。
1990年代以降の彼の演奏には、非常に素晴らしいものもありますが、若い時の面影はなくなってしまったと感じます。
成熟した表現には若さが同居しないのは当たり前だとも思います。
しかし、マゼールの場合、演奏の真剣さ、演奏の新鮮さも明らかに無くなっていきました。
自分は若い頃の彼が大好きだったので、こんな風には思いたくありませんでした。
1990年代以降の彼の演奏もずいぶん聴きました。
ウィーンPO、バイエルンRSO、ニューヨークPO、ミュンヘンPOとのシューベルト、ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナー、マーラー、ドヴォルザーク、ワーグナー、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィッチの交響曲、管弦楽曲。
盛り上げる箇所以外は気が抜けているように感じられる演奏が多くなっていきました。フィナーレだけは大見得を切ったりしてブラヴォーをもらう、という演奏を度々耳にするようになってしまいました。
大見得を切る演奏が嫌いなのではありません。彼が真剣に作った演奏を届けて欲しいんです。
でも、彼はあまりにも頭が良すぎて、特に歳をとってからは、演奏の出来や聴衆の反応や評判など結果がすぐに見えてしまうようになってしまったのではないか? 彼にとって晩年の彼を取り巻く状況は、彼にとって刺激がなさすぎたんじゃないかと思うんです。
彼のような有り余る才能には、ベルリンフィルの音楽監督しかなかったのかもしれません。
事実、彼もその気充分だったから、ベルリンフィルのポストを逃した時、あれほど落胆したのではないでしょうか。
彼が1982年から1984年にかけてベルリンフィルと録音したラフマニノフの3つの交響曲は充実した真剣な演奏です。熱気も感じられる素晴らしい出来だと思います。
ちょうど同時期にウィーンフィルとの録音もかなり出ましたが(マーラーの全集も)、ベルリンフィルとの演奏に比べると、気合いの入り方が明らかに違うように聞こえてしょうがなかったんです。
1983年、ウィーフィルがマゼールと来日した時、FM放送で中継されたマーラーの第5交響曲を食い入るように聴きました。真剣なマゼールではないと、この時も憤慨して友人に電話したことを思い出しました。当時の映像がアップされているのを見つけて聴いてみましたが、印象は変わりませんでした。(世評は悪くなかったようです)
ただ、ベルリンフィル常任争い直前の彼のベルリンでの演奏に精彩を欠いていたものがあった、との記事も読んだことがあるので、さすがのマゼールも疲れていたのかもしれません。
そして、1990年にベルリンフィルのポストをアバドに持っていかれた彼は、古巣のピッツバーグ(アメリカ)に引きこもってしまいます。
マゼールがやる気のない指揮をすることがあり、オケのメンバーがマゼールに殴りかかったという記事は、いつ頃の演奏のことなのか分かりませんが、最近目にしたものです。
今、確かめてみたくなったことがあります。
マゼールが1990年~1992年にピッツバーグSOと録音したシベリウスの交響曲全集です。
このシベリウス全集は、ベルリンフィルと録音が予定されていたもので、彼が気合いを入れて録音したものではないかと思います。彼も出来栄えに満足していたそうです。
何曲か、じっくり聴いてみたいと思います。
ニュース
「マゼール」で検索すると、最近のマゼールの動画が数多く見つかり、また最近のものに偏っていると思います。
しかし、彼の若年期、壮年期の音楽は、正に別物、彼は別人でした。
このように昔の彼を懐かしむ者は彼の変貌についていけていないのだ、と言われます。
手元に、マゼールとウィーンフィル(VPO)のチャイコフスキーとシベリウスの交響曲全集があります。1960年代にウィーンゾフィエンザールでジョン・カルショウがプロデュースを手がけた名録音です。
とにかく、この演奏は素晴らしい! 凄い!!
マゼールを偲んで、チャイコフスキー全集から録音順に聴き直してみることにしました。
第1番「冬の日の幻想」から。
そうです! 鮮明に思い出しました!!
ふつう、その曲に慣れ親しんだあとに聴く2つめの演奏には多少なりとも違和感を覚えるものです。
このマゼールの演奏は最初に聴いた演奏ではないのに、もう興奮に近い感激でした!!
演奏に違和感を感じながらも、説得させられてしまったんです。
ニュース
2014年7月13日 アメリカ在住の大指揮者LORIN MAAZEL(ロリン・マゼール) が、自宅で亡くなりました。
84才。今年の春に体調を崩し、回復することなく逝ってしまいました。
自分は、マゼールが30代から40代ごろの鮮烈な演奏に強く惹かれていました。
最初に聴いたマゼールの録音ですが、
1963年録音のウィーンフィルとのチャイコフスキー「悲愴」、1971年録音のニューフィルハーモニアとのムソルグスキー「展覧会の絵」から聞き始めたのを覚えています。
当時は中学生でしたから、FM放送を録音したテープ(オープンリール!)を大切にくり返し聞いていました。
同曲異演の聞き比べなんて出来るようになったのは、ずっと後になってからでしたが、この2曲の録音は今でもCDで聞き返したりしています。
マゼールの演奏を大量に聞けるようになったのは、大学生になって無料の試聴室に通うようになってからでした。
上野の東京文化会館4Fに音楽資料室があり、楽譜などと共に膨大な数のLPレコードが貯えてあるんです。国内で市販されたクラシックのLPはもれなく揃っているようです!
この膨大なLPレコードのリストを閲覧して、希望レコードを用紙に書いて受け付けに提出する訳です。
自分の順番が回ってくると呼び出され、指定された座席でヘッドフォンを耳にあてて待っていると、間もなく曲が流れてきます。
LPレコード1枚分聞き終わると席を立たないといけませんが、次のレコードを聞きたければ、リクエスト用紙をもう一度書いて出せばいいんです。
同じ曲を違う演奏で一日中聞き続けて、係の方に呆れられたこともありました。
(現在はCD、DVDもあるようです。サービスも続けられています)
協奏曲
プロコフィエフ ピアノ協奏曲 第2番
M.ベロフ K.マズア指揮ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団
自分の中で最も過激なピアノ協奏曲として、バルトークの第2番と共に好きな曲です。
半年ほど前、吹奏楽部オーボエの生徒と「ラヴェルの協奏曲(ト長調)の第2楽章いいよね!」という話になりました。イングリッシュホルン(オーボエ族)のすご~くきれいなソロがある楽章なんです。
で、その生徒はラヴェルのピアノ協奏曲のCDを買い、そのCDのカップリング曲にプロコフィエフのピアノ協奏曲が入っていて、その曲も面白くて何度も聞いてます! と言うんです。
「プロコフィエフ?、じゃあ第3番でしょ?」と聞くと、「いえ、第2番です!」と返してきたので凄くびっくりしました! プロコフィエフのピアノ協奏曲と言えば第3番がとびぬけて有名なんですね。生徒とこんな面白い会話ができるチャンスはそうないと思うんです。
このCDはユンディ・リの独奏、小澤征爾指揮ベルリンフィルのもので、貸してもらって聞いてみました。オケはさすがでしたが、ピアノは小奇麗にまとまっている印象でした。
自分が初めて聞いたのは、ロジェストヴェンスキー夫妻の強烈なライブ放送でした。
さて、この曲は、弦のピツィカートのあとすぐにピアノが少し不安げなメロディーを奏します。ゆっくりしたテンポはこの最初の部分だけで、あとの他の楽章は全部早いんです。アダージョ系の部分はありません。また、曲全体を支配しているのは、この不安げなほの暗い雰囲気です。エネルギーはあるけど、解決に向かって盛り上がっていくという古典的な曲ではないと思います。
第2楽章は快速調で短く、第3楽章も速いんですが、やや軽めの雰囲気(でも明るくはない)ですから強烈な第4楽章とは充分なコントラストがあると感じます。
この第4楽章は激烈なだけでなく、瞑想的な部分もあり、この楽章だけでも聞きごたえ充分で手に汗握ります。そして、最後も突然終わるという型破りな曲。面白いです!
交響曲
交響曲
グラズノフ 交響曲 第1番 変ホ長調
フェドセーエフ指揮 モスクワ放送交響楽団
グラズノフは、リムスキーコルサコフ、ボロディン、チャイコフスキーよりあと、グリエール、ラフマニノフと同世代、そして彼のあとは、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィッチと続くロシアの作曲家です。
交響曲第1番は何と15歳の時の作。「スラブ」の別名あり。
すごく深みがあるでもなく、インパクトがあるでもないのに、ちょくちょく聞いています。好きなんです。
15歳ならもっと気負った音楽になるんじゃないのかなぁ、と思うんだけど逆に落ち着いた雰囲気。そしてなぜか懐かしいような響きもあわせ持つ。この取り合わせは不思議なんです。
素朴な自然の情景が音になったよう。第3楽章にも控え目ながらひっそりとしたたたずまいがあります。チャイコフスキーのような一種神経質な感じはありません。
このCD、もう一つ特徴的なのはフェドセーエフの演奏です。音色はもっさりしていて、洗練されてない。アクセントもはっきりせず、基本レガート奏法を心がけているかのよう。
それに、最初一番違和感があったのが終楽章。冒頭オーボエがテーマを2度吹いたあと堂々とした主部に突入するんですが、ここをまったくテンポを変えずに進んでいくんです。他のどのCDも主部に入る時はテンポをグッと落として強調してくれるという、聞かせどころなんですよね。さらにフィナーレもすごくあっけない終わり方。
フェドセーエフのグラズノフ全集の他の場面でもこんなそっけない表情がちょくちょく登場するんです。わざとやってるな。
ところが、こんな野暮ったい演奏に不思議に無意識に引かれていき、ヤルヴィ、スヴェトラノフ、尾高、セレブリエールよりこのCDを聞いてしまうんです。
これがロシアの響きなのかもしれません。ロシアのぬくもりなのかもしれません。